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ナラティブを終えて(その2:インプロ(即興芝居)のパフォーマンスの差し詰めの到達点と真の幕開け/ インプロとの出会い〜ロンドンでの1年間の演劇遊学)

↓の続きです。

ナラティブを終えて(その1:インプロ(即興芝居)のパフォーマンスの差し詰めの到達点と真の幕開け/ インプロとの出会い) - インプロsalonのブログ

 

 そして二つ目は(もう既にちらっと書いてますが)、このインプロという手法は、この養成所では、脚本のある演技をより活き活きと柔軟にするため、という位置づけでレッスンをしているため、それに必要な部分だけをピックアップしているに過ぎないが、

 欧米ではしっかりと体系だった手法として確立していて、「極めれば、脚本がなくてもその場で1本のお芝居ができる」という説明でした。

 

 それを聞いたときは「え!?なにそれスゴイ!!もうそれって人類の英知じゃん!?」とやたら興奮したことを憶えています。

 

 養成所に通っていた当時、講師の刷り込みもあったのか、俳優の力が本当に試されて、誤魔化しがきかないのは舞台演劇であり(映像は見てくれが良ければカメラワークと編集次第で、演技が下手でもなんとかそれなりに仕上がる、とのこと)、この世界に飛び込んだからには、自分が目指すべきものは舞台俳優だ、と思ってはいたものの

 一方で、元来、舞台というものは、非常に時間と労力がかかるもので、その割に利益はほとんど見込めないし(やり方はあるでしょうが)、生き馬の目を抜く猛者たちの世界で抜きんでることは可能性として非常に低く、じゃあどうやって食っていくために稼いでいくのか、ということに頭を悩ませていた僕にとっては、天啓を受けた気がしたものです。

 

 しかもまだ当時は、インプロ自体の知名度が日本においては無いに等しいものであり、これをいち早く身につけて公演を打てば、話題性も高いだろうし、しかも毎回違う内容になるんだからリピートも見込みやすく、その分、通常の舞台演劇よりも利益が見込めるのではないか?との算段がありました。

 

 さらに当時の浅はかな知識でも、その頃やっと日本で話題になりつつあったコーチングという手法との親和性も高いし(CTPのプログラムを50万払って受けてたりしました…)、コミュニケーション能力の向上といった名目で、ワークショップなんかを開けば、公演以外での収益も見込めそうだ!なんて夢想していました。

 

 しかし、肝心のインプロの体系だった手法をどこで身につければいいのか分かりませんでしたし、まだ20代そこそこの若造がたかが養成所を出たばっかりで、何ができるとも思いませんでした。

 

 そこで、2年間の養成所期間を終えた後に、インプロの手法を更に学ぶため、そして年齢の若さを箔をつけることで補おうと、海外に1年間の演劇遊学をしにいこうと思い立ったのでした。

 

・ロンドンでの1年間の演劇遊学 

 

 ところが、思い立ったはいいものの、当時はコネなんてものは全くなく、しかも、まだインターネットがダイヤルアップ接続の時代で、遊学先の海外の情報を集めるにも、物凄い時間がかかりました。 

 加えて(一応はW大の英文学専修を卒業し、TOEICも860(帰国後は930)を取っていたものの)、対面での英語のコミュニケーションなんて、意思疎通が何とかできる程度で、演技をするレベルには到底及ばない状態でした。

 

(その頃、鴻上さんの『ドン・キホーテのロンドン』を自分に重ね合わせながらむさぼり読んでいました)

 

 なので、まずもって僕の拙い英語でも1年間受け入れてくれる英語圏の演劇学校を探すのが先決で、入学してから現地で情報を集め、英語が上達してからインプロを教えているところに通おうと思い、

    米国と英国に絞り込んだものの、最終的には演劇といったらシェイクスピアでしょ、という安直な考えで、なんとかロンドンにある学校を見つけ出し、まずはそこに通うことにしました。 

 

 入学当初は先生や生徒の言っていることはなんとか分かるものの、自分が話す段になると一旦、頭の中で日本語を思い浮かべて、それを英語に変換してから話すという体たらくだったので、理想である当意即妙には程遠く、身体的な表現ならまだしも、その場でセリフを作って演技をするとなると、どうしても必要のないタイムラグが生じてしまいます。

 

 なので、エチュードの授業などは、本当に言いたいことではなく、自分の知っている、その場にあった短いフレーズを使って、なんとか切り抜けるという日々を送り、悶々としていました。

 

 また、その学校にはインプロのレッスンはなく(発声だとか身体表現だとかカメラへの写り方とか、オーディション対策とか、いわゆる演劇一般のことは扱っていましたが)、学校の先生にきいても「インプロなんて演技手法は知らない」というので(ちなみにTOEICのことも知っている先生はいませんでした…)、

 地道に、遅いネット回線(たしか500Mとか)でロンドン近辺の演劇レッスンの情報を探したり、ある程度大きな街の掲示板を虱潰しにあたっては収穫なしと、不毛な日々が続きました。

 

 結局、どこかのカルチャーセンターみたいなところで、インプロの講座を見つけたのですが、EU圏外の人には料金が4倍近く設定されていて(当時そういった経済的優遇がEUの人には成されていました)、相当悩みましたが、やっとのことで見つけたこの機会を逃したら次はないとおもって、申し込みに行きました。

 ところが、受付に行くと「あなたの英語のレベルでは他の受講生についていけないし、迷惑になるから受講はさせられない」と言われてしまい、途方に暮れていました(今思えば、その講座は、ここでいうインプロとは別のものだった気がします)。 

 

 その間にも、渡英直前に手に入れた『インプロゲームー身体表現の即興ワークショップ』を頼りに、日本人の生徒と書いてある内容を公園で試してみたりして、少しでもインプロを習得しようともがいていたりしましたが、そもそもその生徒はインプロに興味がなかったようで、次第に一緒にやってくれなくなりました。

 けれどもインプロに対しての熱意は衰えることなく、パラパラと『インプロゲームー身体表現の即興ワークショップ』を開いては、一人だったり、想像上の相手とインプロゲームをする日々を過ごしていると、ある時、参考文献として、Keith Johnstoneの『Impro:Improvisation and the Theatre』と『Impro for Storytellers』が載っているのを見つけ、早速書店に赴き、購入をしました。

 その頃はハリー・ポッターを原書で読むようになっていたので、英語の書籍を読みたいモードになっていたのも相まって、貪るように(なかなか意味が取れない部分もありましたが、特に『Impro for Storytellers』を)読んでは、ウンウン唸ったり、脳内で様々なエクササイズをしてみたりしては一人で興奮し、

 帰国してからは早速インプロのワークショップに行ってみようと、遊学中にいくつか候補をネットで調べあげ(といっても当時にインプロのワークショップをやっているところなんてごく少数でしたが)、申し込んだりしていました。

 

 また、ロンドン滞在中に、実は帰国してから一緒に団体を立ち上げようと話していた仲間の身内に不幸があり、ともに活動していくのは難しくなったとの報告もあり、帰国後は、仲間探しとインプロの研鑽を同時進行でやっていかないといけなくなったりと、「なかなかにハードモードに突入か?まあ、でも、なんとかなるだろう、しよう!」と思ったりもしてました。   

 

 余談ですが、当時の滞在記録を、今はなき?ホームページビルダーで作成しては公開しており、そのタイトルの一部には「へっちゃLIVE」という言葉を入れていて、結構気に入っていました。

 

(つづく)

<以下、予定している項目>

・倫敦帰国後、インプロの洋書乱読

 ・INNERSPACEとの出会い

 ・オリ色との出会い

 ■インプロのパフォーマンスを拓いていく

・ 内輪から世間へ

■実践することと育成すること

・説得力と受け渡し

■インプロでの知見を拓いていく

・就職時に成し得なかったこと

・教えること、出来ないことが出来るようになる喜びに携わる喜び